21ホールにて、無料上映されます。多くのかたのお越しをお待ちしております。


ジュニア映画制作ワークショップ作品発表
2001年夏。公募で集まった31名の中学生が映画づくりに挑戦しました。かれらが制作した3作品「真夏の初恋」、「Dynamite Drug」、「日記」の上映と、ゲストによる講評。
●ゲスト 佐藤忠男氏(映画評論家)ほか

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真夏の初恋
でこぼこクレヨンズ/ビデオ/カラー/18分

作品あらすじ
渚は大好きな智寛に告白して、OKしてもらったその日に引っ越しを知らされる。落ち込む渚とは逆にどんどん舞い上がっていく智寛。デート中でも渚はどこか冷めているのに、智寛は全然気づかない。そして数日後、学校の授業中に智寛は渚の引っ越しを知る。教室を飛び出し、自転車に乗って駅に向かって走り出す。果たして渚に追いつけるのか?ちょっと笑える二人の一生懸命な初恋のお話。
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Dynamite Drug
BeautifulーGuy/ビデオ/カラー/22分

作品あらすじ
とある中学校。そこでは、初音をボスとする集団いじめが行われていた。標的は何のとりえもない女の子、愛理。好きな男の子にも声もかけられない。
ある日、いつものようにいじめられ、とぼとぼ歩いていると、不思議なピエロから「Dynamite Drug」という怪しげな薬を渡される。次の日、学校で飲んでみると・・・。
思春期の心の葛藤と成長を、中学生自ら描いた力作。
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日記
第四会議室/ビデオ/カラー/15分

作品あらすじ
さくらは元気な中学二年生。ある日、不思議なおばさんの店で不思議な日記帳を発見する。なんと!そのノートには書いた事が現実に起こるという不思議な力があったのダ。そのノートで交換日記を始めるさくらと親友のはるかは不思議な力でいたずらを始める。いたずらは次第にエスカレートして・・・ついにケンカをした相手、大輔のことを「大輔ウザイ、消えろ!!」と書いてしまう。そしてその帰り道、大輔のお姉さんに出会ったさくらとはるかは「大輔なんて知らない!」と言われてしまう。大輔が本当に消えてしまった!?焦ったさくらとはるかは大輔を戻そうとするが・・・。
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協力:日本映画学校、川崎市市民ミュージアム、川崎市教育委員会ほか
技術協力:日本映画学校講師、在校生のみなさんほか

制作協力:小田急電鉄株式会社

しんゆり発の若き才能
─日本映画学校卒業制作作品上映─
トシ君の生まれた日
2000年/日本映画学校/16mm/スタンダード/カラー/光学モノラル/55分
製作:渡辺千明/監督・脚本:吉川光/撮影:石川継洋、辻浩一郎、塩野谷祐介/美術:妹尾昌紀
出演:太田和渡、沖津和、時任歩、野口雅弘
第54回カンヌ国際映画祭学生部門出品
STORY
中学2年生の山下俊秀は、母に暴力を振るう父、わが子に関心がない母、そして生きる気力を持たない兄とともに生活をしている。心の拠り所は俊秀の飼っている犬のペスだけ。そんななか、家庭教師としてやってきた田沼隆子に思春期特有の感情を抱くが拒絶されてしまう。そして、親友である斉藤裕紀の死。絶望した俊秀は、一度は自殺しようとするが、こんな状況の中でも強く生きていこうと決意する。

監督:吉川光
1980年生まれ、東京都出身。都立城北高校卒業後、日本映画学校に進み、渡辺千明ゼミに2年間在籍。今回の上映作品は日本映画学校の卒業制作作品。

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2000年/日本映画学校/ビデオ作品/スタンダード/カラー/光学モノラル/67分
製作:安岡卓治/監督・撮影:小林貴裕/音楽:加藤昭衡、岡村美帆/編集:本郷修一、岩崎廉嗣
第1回世界学生映画祭大賞受賞
STORY
5年振りに「あの家」へ帰る決心をした。「私の家庭は、微妙なバランスで成り立っている」そう自分に言い聞かせ家族と向き合えないでいた。「あの家」には、7年間家に閉じ籠もり、外に出ようとしない兄。その兄を抱え苦しむ鬱病の母親が暮らしている。母屋に住む祖母は末期の大腸癌。父親は家計を支えてはいるが、「あの家」と距離を置き生活している。貴裕は自分に何ができるのか長年悩み続けていた。彼の背中を押したもの、それはカメラだった。

監督:小林貴裕 
1976年生まれ。長野県出身。高校卒業後、自主映画を撮っていたが、もう一度、一から映画を勉強したいと、98年、日本映画学校に入学。ニ年次においてドキュメンタリーを学ぶ。本作品は日本映画学校の卒業制作作品。



学生映画について 
佐藤忠男(映画評論家・日本映画学校校長)


自分の学校の自慢のようで申しわけないが、新百合ヶ丘の駅前にある専門学校、日本映画学校の学生の実習作品のなかから、外国の映画祭で受賞したり、劇場で一般公開されて評判になったりする映画がつぎつぎに現れている。「ファザーレス/父なき時代」「あんにょんキムチ」「青・chong」などがそうで、これらはいずれも地元のこの<しんゆり映画祭>でまず公開され、広く世界に向けて発信されていった。

今年も、三月に卒業していった学生たちの作品に数本、素晴らしい出来ばえだと自負できる秀作があり、今年の<しんゆり映画祭>ではそのうちの二本を見ていただきたいと思う。

一本は劇映画で「トシ君の生まれた日」。これは今年六月のフランスのカンヌ映画祭のシネフォンダション部門に選ばれて上映されたものである。本校の設立者で理事長の今村昌平監督の作品「赤い橋の下のぬるい水」もコンペティション部門に選ばれていたことで師弟同時出品だと話題になり、NHKのニュースなどにも取りあげられたからごらんになった方もいるだろう。

この映画は中学生の自他に対する殺意と言う深刻な問題を扱っている。昨今この問題は盛んに論じられているが、この映画は作者がまだ二十歳で、問題の少年たちの年令に近く、問題の少年たちの心情に非常に近いところで内面的に描けているというところが美点である。若者の気持ちには若者でなければとらえられないところがあり、そこに一途に迫っているのだ。その真実味は外国でもよく理解されて、カンヌ映画祭のその部門で上映された二十本のなかではいちばん拍手も大きく、珍しく「ブラボー!」という声さえあった。

「HOME」も若者の苦悩を若者の目で描いた問題作である。こちらはドキュメンタリーで、ひきこもりが主題だ。「トシ君の生まれた日」と同じように、自分たちの世代が直面している大人には理解できない問題を、自分たちの手で表現しようとするところにすごい真剣な力が出た。沖縄の世界学生映画祭で大賞を得た。

若者でなければ描けない内容があるものだということをこの二本の映画は示していると思う。<しんゆり映画祭>では中学生のつくる映画にも力を入れているが、中学生でなければ作れない映画というものもきっとあると思う。前回もそう思ったが、だからこれも非常な楽しみである。