2002年/日本/16mm/83分
監督:橋本信一
ナレーション:岡部政明
掘るまいか手掘り中山隧道の記録



ともすれば陸の孤島となる雪深い新潟県の山古志村。この村で、昭和初期に自らの手で隣町までトンネルを掘ろうと立ち上がった人たちがいた。カメラは戦争を挟んで何年にも及んだトンネル完成までの困難な道のりを、再現シーンを交えながら追う。加えて、トンネル内部の荒々しい掘り跡や、4mを超える豪雪、春の農作業の楽しさなど村の暮らしを丹念に描写することで、このトンネルがどんな人々の手で完成したかを描いている。

この映画には、苦境のなかでいちずにトンネル掘り続けた人々と、そのトンネルを後世に伝えたいと願った者と、今を生きる我われに問うべきことを探しながら映像におさめた者の、三者三様の魂が込められている。今この隧道の隣には、立派なトンネルが新たに建設されている。新たなトンネルや車は何の苦もなく人を遠くへ運ぶだろう。本当の誇りや喜びとは何か、進歩とは何か。観終わって考えずにはいられない。(由田)


撮影日誌を映画制作ニュースで公開しています。

http://www.siff.jp/hasimoto.html

 トーク

橋本信一監督 山古志村の方々ほか 

 山古志村物産フェア



―豪日に架ける―
愛の鉄道
1998年/日本/87分
監督:千葉茂樹
ナレーション:藤田淑子

出演:アンソニー・フィールド、
スーザン・ライアン、クリス・ヘイワード

 太平洋戦争中、「死の鉄道」と悪名の高い泰緬鉄道建設で、数多くのオーストラリア人捕虜たちが日本軍に虐待され命を落とした。戦後、反日感情のおさまらぬオーストラリアで、元捕虜である従軍司祭が「死と憎しみの鉄道」ではなく、「愛の鉄道」を両国間に敷こうと立ち上がり、彼に賛同する人たちが日本へ向かった。その一人、トニ・グリン神父は、貧困に苦しむ日本で戦争未亡人や子どもたちへの援助、日本人捕虜の墓参や、混血児救済など、日豪の和解と友好に生涯を捧げた。

  日本人の新婚旅行先として大人気の「コアラとカンガルーの国」オーストラリアとわが国の間に、こんな歴史があったと知る人は少ない。その意味で、このドキュメンタリーは貴重だ。この映画はトニ・グリンの活動や、日々の素顔をさまざまな角度から描くことで、彼と彼をとりまく人々の行為の尊さや、遺したものの大きさを伝えている。そして神父の長年の行為にむくいるかのごとく、市民の協力のもとに制作から上映まで行われてきた。わたしたち個人が平和のためにできることは、まだたくさんある。 (由田)

 トーク 千葉茂樹監督ほか

 オーストラリアチーズとワインの試飲食会