インド映画傑作選

<知られざるインド映画の名作>

マン・オブ・ザ・ストーリー
KATHAPURUSHAN
1995年/インド・日本/35mm/E・ビスタ/カラー/107分
監督・脚本・原案:アドゥール・ゴーパーラクリシュナン/撮影:ラヴィ・ヴァルマ/音楽:ヴィジャヤ・バーシュカル
出演:ビシュワナータン、ミニ、ナレンドラ・プラサード、ウルミラ・ウンニ
ボンベイ映画祭FIPRESCI賞受賞






STORY
イギリス植民地から独立へとインドが大きく揺れ動いていた時代の中で、クンニュンニは農村部の旧家の息子として生を享けた。彼は生まれながら吃音で、父親はどこにいるのかさえ分からない。そして、革命共産主義的な思想を持つ叔父の影響を受け、彼もまた左傾化していくのだが…。激動するインドにおいて、権力を恐れず、確かに自分の意志で立ち、歩んだクンニュンニの半生を、穏やかで色鮮やかな情景とともに追う。
COMMENT
作品を見終わった後も、静かで目の覚めるような緑の情景がいつまでも瞼の裏に残って、消えません。でも、この静寂の中にこそ、作者のインド社会に対する鋭い眼差しと強い意志があるような気がしました。「静かなる狂」とでも表現できるのでしょうか。作品の冒頭と最後で老人が語る人食いのラクシャサと王子のやりとりは、この作品のテーマを象徴しているようで、非常に印象的でした。
監督:アドゥール・ゴーパーラクリシュナン
1941年インド、ケーララ州生まれ。故ゴーヴィンダン・アラヴィンダン監督に続き、インド南部ケーララ州のマラヤラム語映画の中心的存在。本作は、95年NHK共同制作作品である。











KAAGAZ KE PHOOL
1959年/インド/35mm/シネマスコープ/B&W/148分
製作・監督グル・ダット/脚本:アブラール・アルヴィー/撮影:V.K.ムールティ/音楽:S.D.バルマン
出演:グル・ダット、ワヒーダー・ラフマーン、ジョニー・ウォーカー





STORY
この世の関係はうつろいゆくもの。全てはかなく、終わるもの…。スレーシュは撮影所の花形監督。スター女優がわがままを言おうが、社長がシナリオに口をだそうが、 全てはねのけてきた。ある夜、スレーシュは一人の女性と出会う。薬売りの女、シャーンティ。孤児院育ちの彼女の無垢の美しさに惹かれた彼は、まわりの皆が反対するなか、 映画のヒロインに抜擢する。映画は大ヒット、二人は恋におちるが、運命の歯車が少しづつ狂い出す…
COMMENT
映画監督は、どこの国でもみんなナルシスト。美しい女と恋をし、作品は、観客から絶賛を浴びることを夢見る。「インド映画の奇跡と称されたグル・ダット監督の最後の作品だが ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』や、フェリーニの『81/2』と似た大監督のナルシズムを感じる作品。といっても、厭味なところは少しもなく、インドの強烈な太陽の光の 下で繰り広げられる純粋な魂のドラマが巧みな語り進行していく。
監督:グル・ダット
1925年インド、バンガロール生まれ。カルカッタで教育を受け、ウダイ・シャンカルの舞踊学校で2年間学ぶ。その後振付け師として映画界入りし、俳優及び助監督を経て、1951年『賭け』で監督デビュー。以降俳優兼監督兼プロデューサーとして数々の名作を発表。1953年当時人気のあったプレイバック・シンガーのギーター・ラーイと結婚。1964年自ら命を絶つ