聖徳太子
「聖徳太子」を書き上げた池端俊策監督に聞く!



99年のしんゆり映画祭で特別上映した「あつもの」の池端俊策監督。この度、2年がかりでNHKスペシャルドラマ「聖徳太子」の脚本を完成しました。池端さんは映画監督としては新人ですが、脚本家としては常に問題作を執筆されてきた大ベテランです。「聖徳太子」とは一体どんな作品なのか、当映画祭顧問の武重邦夫がインタビューしました。
武重:「大河ドラマで聖徳太子をやったら絶対に見ないけど、池端さんの単発ドラマだと不思議に見てみたいという気になる()
池端大河ドラマでは色々の人をやってるが、聖徳太子だは未だやっていない。それで、単発でやりたいと言うことで僕に回って来たんですよ(笑)」

武重「あのくらい古い話になると資料だって数少ないでしょう?」

池端99年の秋から日本書紀を読み始めて半年ぐらい読み続けた()でも、それだけでは理解出来ないから解釈本も読む、古代史、朝鮮半島史、更に中国の歴史に触れないと当時の東アジアの事が分からない。苦行でしたね」

武重「僕は現代史が専門で、聖徳太子の時代と言うと皆目検討がつかないんだけど」
池端「大和朝廷から日本国に移るというか、統一国家が生まれる瞬間なんですね・・・」
武重「それまでは、日本国とか日本人という意識は無かった?
池端「そうですね。当時は中国という巨大国家があって、その脇に文化を持った朝鮮国があって、日本はその文化を貰っていた・・・」

武重「独自の文化が無けりゃ、相手は国と思っていない?

池端:「聖徳太子はそこに気か付いた。つまり、文化として仏教を取り入れた」

武重: 「武力でなく文化を国の柱にした・・・・今の政治家たちに聞かせたいね()

池端「彼は独自な文化国家を作ることで、朝鮮や中国に対し対等を表明したわけね」

武重「相手は驚いただろうね、何だ、あれはって?・・・()
池端「東海の小島の村落がワイワイ言ってるって()
武重「中国は相手にしなかっただろうが、日本国内は緊張しただろうなあ」
池端「黒船と同様の危機感ですね。その危機感で国民は一体化して行くのだが、それだけでは求心の核が無いから本当の国家は成立しない」
武重「そこで仏教という文化が生きてくるわけだ」
池端「スピリッとかモラルね。17条の憲法の核は和の精神ですから」
武重「すると、今度の脚本はそこがポイントになるわけですか」
池端「いえいえ。僕は学者じゃないし、ドラマの書き手ですからね。やはり人間としての聖徳太子の心の部分に興味を持つんですね」
武重「それは、聖徳太子にも人間関係の葛藤があったということですか」
池端「そうですね。青年聖徳太子は蘇我馬子というカリスマの擁護の下に独自の文化国家建立の偉業を果たすが、 やはり革新ですよね。対的な国家権力を望む蘇我馬子にとって聖徳太子は次第に鬼っ子に見えてくるでしょう・・・」
武重「馬子と聖徳太子は同族ですね。肉親でもある」
「その辺りが面白い。肉親の葛藤は時代と関係なく永遠に繰り返されていく、人間は壮大な歴史空間を創造しながらも一番身近なところで悶え続ける」
武重「オイデプスもリア王も現代人も、みんな悶える葦というわけだ」

池端「だから、僕は古代史を書いてる気がしない。実感としては現代の人間を書いてる・・・・身近な青年を書いてる気持ちでしたね」

武重「しかし、1500年も前に<国は文化をもって国をなす>と喝破した聖徳太子は凄いね。つまり、それからの日本は退化し続けて来たんだ()
池端「現代はその退化の究極にあるのかも知れない()
武重「聖徳太子、早く見たいね。撮影は何時?」
池端「2月に撮影が始まって、11月頃に放映と聞いてるんだけど」
武重「映画の方はどうですか?」

池端「脚本は書き上げたんけどね。やってくれる人が居なかったら、自分で撮ろうかとも思っています()

武重「是非、もう1本撮って下さい。しんゆり映画祭は期待して待ってるんだから」
池端「ハハハ・・・プレッシャー感じるなあ」

武重「激励してるんだよ()本日はどうも有り難うございました」

2001 日本映画学校にて
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